第19章 【不器用彼氏】×【喧嘩】
文面を読んで、直ぐに理解した。雨衣は俺達の家に居る。
きっと弟の遅いと俺が貰う。という言葉は本心でもあり、
俺を呼び寄せるための両方だろう。
家に近付くと、俺が来たのを知ってか知らずか良いタイミングで
家から出てくる弟を、蒼依を見付けた。
俺に気付くと 蒼依は こっちだと言う様にひらひらと手を振った。
すれ違いざま、俺に
『俺、振られちゃった。やっぱり兄さんが良いんだってさ。
邪魔者は撤退するからさ。ちゃんと仲直りしてよ?』
なんて、少し悲しそうに笑って言った。
弟がなんだか、かっこよく見えて。少しだけ、悔しくも思えた。
俺は、蒼依に感謝して家へ入った。
「ただいま。」
と声を零せば、直ぐに
「空…?」
と声がした。声のした方を見ると、目が少し赤くなった雨衣を見付けた。
「え、っと」
一瞬気まづくて、でもやっぱり言葉にして伝えなきゃと、彼女と話す決心をした。
「さっきは、ほんとごめんな。あんな事言ったけど…
あの子の事とか、俺は良く知んないし。あの子のが可愛いとか思わないよ。
雨衣が1番可愛いし、1番好き。」
俺、なんか浮気した男みたい?
自分が情けなく思ってると、彼女の温もりが俺を優しく包んだ。
「私こそごめんね、空。さっき蒼依くんに言われて気付いたの。
彼氏の前で他の人の話するのは、ダメだったよね。」
「…ん、大丈夫。少し傷付いたけど。俺じゃ満足しないのかな、とか思ったけど。」
なんだか謝る彼女が可愛くて、つい悪戯心が芽生える。
「そ、それは…!本当にごめんって…!そんな事全然ないから!」
確かに本当は傷付いたけど、全部全部俺が情けないのが悪いんだから。
それに、雨衣が蒼依を格好良いと言う理由も、分かった気がするし。
「じゃあ…雨衣は本当に俺の事好き?」
「うん。」
「1番?」
「もちろん。」
「ならさ、雨衣から俺にキスして?」
「なっ…!」
また少しだけ意地悪。だって俺だって、不安になったんだから。
ちゃんとちゃんと、雨衣の想いを知りたいから。
「で、でも…」
「ほら、早く ー…」
顔が赤い彼女の、
唇に触れるだけのキスは、本当に一瞬とも思えるくらい短く感じた。