第17章 【真面目執事】×【一日恋人】
「じゃあまずは…名前から。
折角だし、空も私の事名前で呼んでくれない?」
「…雨衣…様?」
「呼び捨てで大丈夫よ。恋人同士でしょう?」
「…雨衣。」
少し躊躇いがちに、確かに呼び捨てで私を呼ぶ。
やっぱりこの方がいいよね。
「服は…」
このままでは可笑しいからと兄に洋服を借りて、
彼にそれを着てもらう事にした。サイズもピッタリでちょうどいい。
「…やっぱり私にはこんな服、似合いません。」
自信なさげに首を振る彼に言う。
「空はかっこいいよ?似合うし自信持って!
それに、敬語もダメ!」
恋人同士の関係を作る為、指示すると
彼は何度か困った顔をしたけど、ちゃんと全部頑張ってやり遂げてくれた。
「もう遠くまで出掛ける時間も無いから、今から私の行きつけのカフェに行かない?」
「はい…じゃなくて…行こう。」
私が手を差し出すと、ゆっくり彼は手を取った。
「今日はありがとう。空に無理やりこんなことさせちゃってごめんね。」
無理させてしまったかな。と歩きながら今日のことを話す。
良い提案だと思って提案したけど、今更不安になる。
「いえ、楽しかったですよ、お嬢様。今日はありがとうございます。」
いつもの口調に戻り、優しく私に言った。
「それに…少しの時間でも、お嬢様と恋人同士なんて、嬉しかったですから。」
「え、?」
「何でもありません。
ほら、時間もあまり無いですから、早く行きましょう?雨衣。」
思いもよらない彼の言葉と、突然の名前呼びに少しだけドキリとしたのは、
どうしてなんだろう。