第17章 【真面目執事】×【一日恋人】
「 お嬢様、起きてください。朝です、起きてください。 」
ゆさゆさと、体を揺さぶられる。
まだ起きたくない。なんてワガママが通るはずも無く。
眠い目をこすりながら、重い体を起こした。
「おはようございます。お嬢様。」
いつ寝ているのか分からないその執事は、
眠そうな様子を1ミリも見せることも無く、私に挨拶をした。
「…おはよう。…いつもありがとう。」
申し訳なさも感じながら、お礼を伝えると、
いつも無のその表情が、少しだけ 和らいだ気がした。
「お嬢様。昨日、予定も無く、今日はゆっくり過ごすと聞きました。」
そう言えばそうだったっけ と思い返して、ふと名案が浮かぶ。
「空さえ良ければ、今日は出掛けない?」
そう告げると、執事は驚いた顔を浮かべ、返事をした。
「お嬢様のお望みとあらば、私はなんでも従います。」
うん、予想通りの反応だ。
「なら、私のお願い、聞いてくれる?」
「勿論です。」
「今日は、お嬢様と執事の関係は忘れて、恋人として、どこかへ出掛けない?」
我ながら、良い提案だと思った。
1度彼には執事としての身分を忘れてもらいたかったし、
それに昔恋愛の話をした時、恋人に憧れると言っていたし、
まあ、でも強制はしないけれど。
「貴方の意見も聞きたいから…執事としてじゃなくて、本当の返事をして。」
酷く驚いた様子だったけど、少しして、
「分かりました。今日だけ、ですよ。」と言ってくれた。
突然の提案に乗ってくれて嬉しかったけど、
それでもやっぱり、執事として引き受けてくれたのかな?と申し訳なく思った。