第13章 【幼馴染】×【記憶喪失】
暫くじっとして考えていると、私の母親らしき人が来て、私の手を掴んだ。
「…良かった…。色々急いでて、隣に居られなくてごめんね。」
「私の事…分かる?」
「お母さん、ですか。」
恐る恐る私が聞くと、お母さん?は笑った。
「覚えているの?」
「…い、いえ…さっき、蒼依って言う人から聞いたので…」
「蒼依君から?蒼依君、優しいわね。私がずっとここに居られないからって、俺が見てますから。って言ってくれたのよ。」
そんなにその人はいい人なのだろうか。
私がさっき2人きりでいた時も、不思議と嫌な感じはしなかったし。
「その人は、どんな人、ですか?」
「…そうね…。優しい子よ?仲が良くて、2人お似合いで。付き合ってるんじゃないかと思ってたけど…違うみたいで。」
「え、」
そんなに仲が良かったのだろうか。
「…雨衣っ、お腹空いてるだろ_あ、」
「邪魔しちゃ…悪いよな。」
途中、誰かの声が聞こえたような気がしたけど、お母さん?は構わず話し続けた。
「前に2人に聞いたら、お互い恋愛として好きって言ってたのよ?今は記憶が無いけど…思い出したら、きっと_」
そう言いかけて、重いものが入ったビニール袋が床に落ちる音がした。
「あら?蒼依君。」
カーテンをあけて、何が起こったか見ると、そこには、ビニール袋を拾う蒼依さんが居た。
「…っ、これ、」
ビニール袋を置いて、顔を真っ赤にして逃げる様に去っていった、その人にドキッとしたのは、
きっと全てを思い出したとしても
_私だけの秘密。