第13章 【幼馴染】×【記憶喪失】
「…目、覚めたか?」
目が覚めると、真っ白い天井が広がっていた。その横には、知らない男性。
あれ、私は誰だっけ…?ここは、どこだろう。
「だ、誰ですか。」
急になぜか怖くなって、その人に聞くとその人は悲しげに笑った。
「俺は…蒼依。ここがどこか、自分が誰か分かるか?」
首を横に振ると、その人はまた言った。
「名前は…市倉雨衣。高2。昨日学校に向かう途中、交通事故に合って一命は取り留めたけど、記憶が無い。」
「俺は、雨衣の幼馴染。」
全てを淡々と説明するその人に、私は少し付いていけなくて。
「え、え…?」
「ごめんな?…ゆっくりでいいよ。」
どうしたらいいか戸惑う私の頭を、その人は軽く撫でた。
「…っ。」
知らない男性に頭を撫でられるのは、少し抵抗があったけど、どこか懐かしいような、そんな気もした。
「…おばさんと先生に言っておくからな。…不安かも知れないけど、おばさんとおじさんは優しい人だから。」
私にそれだけ伝えて、その人は病室?から出ていった。
「…市倉さん、入りますよ。」
こんこん、と音がして、誰かが部屋に入って来た。
「は、はい。」
「私は、看護師です。体調どうですか?痛い所は?」
「えっと…大丈夫です。」
記憶は無いが、女の人だったし、優しそうな人だったので、話しやすかった。
「あの彼、優しいですね。ずっと付き添っててくれたんですよ?記憶は無いかもしれませんが…彼に、何か言ってあげるといいですよ。」
にこり、とその人は優しく笑って言った。
その人は幼馴染と言っていたけど、どうして記憶もない私にそんなにずっと付き添っていてくれたのか。
「…は、はい…。ありがとうございます。」
「ふふ。…その言葉、先生に伝えておきます。じゃあ、大丈夫そうなので私も行きますね。」
看護師さんも、部屋から出ていって、私は1人、さっきの人の事を考えていた。