第11章 ⊿【彼氏の兄】×【看病】
風邪を引いた私1人、静かな家にピンポーンと音がした。
階段急いで降りてドアを開けると、何故かへへ、といつもの様に笑う彼氏の兄が居た。
「やっほ、来ちゃった。」
「えっ…お兄さん?」
「全く…空は何やってるんだか、俺に雨衣ちゃんを預けるなんて。」
驚く私を気にせず一言言って、ドアを閉めて私の家へと上がって行く。
「俺だって…手を出さない保証はないのに。」
今度はぼそ、となにか呟く声が聞こえたけど、内容までは聞こえなかった。
「それより、どうしてお兄さんが…」
私が質問を投げかけると、お兄さんは事情を説明してくれた。但し条件のようなもの付きで。
「その、お兄さんって呼ぶの辞めてもらえないかな?」
「…蒼依…さん。」
空に怒られそうで戸惑ったけど、それ以上に私は理由が聞きたかった。
「…まぁいいや。空がどうしても外せない用事があるとかで…俺に代わりに言って欲しいって言われたんだ。」
「ごめんね。空じゃなくて。」
「それは…いいんです、けど…。」
「けど?」
どうしても外せない用事って何だろう。なんて、少し気になってモヤッとする。でも用事が何か勝手に聞こうとも思えなかった。
「何でもないです。ありがとうございます…。」
「…?それより!俺起こしちゃった?ごめんね。寝ていいよ。」
「大丈夫です、こちらこそごめんなさい。なんか」
少し緊張する私に、お兄さんは笑ってくれた。
「そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ?それより、キッチン借りるね。お粥を作っていくから部屋でゆっくりしててよ。」
「はい。ありがとうございます…。じゃあ、私は上に居ますから。」
そんなお兄さんに、安心した私は軽く頭を下げて上へと向かった。