第73章 【人気者】×【友達】
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「それでさ…〇〇のシーンで、
泣きそうになっちゃったよ、おれ、」
「!!そこ、私も泣きそうだった。」
誰かとお気に入りの小説の話が出来るなんて嬉しくて、楽しくて。
やっぱりこういうのがなくなってしまうのは、
正直嫌だ。
ずっとこの時間が続けばいいのに。
なんて願ってしまう。
「雨衣?どうかした?」
空くんが心配そうな顔で私を見る。
「本が読み終わっても、普通に話せる?」
「え?」
この気持ちは、きっと、
ちゃんと言わなきゃ伝わらない。
「明日からも友達でいてくれる?」
きっと空くんなら笑って良い返事をくれるとどこか期待していたけれど、
空くんの表情は真剣で、不安が過ぎる。
「ごめん、友達では居られない。」
頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなる。
聞き間違いであって欲しいけど
多分、聞こえた通りであってる。
「好きなんだ、雨衣が。
……だから友達じゃなくて、彼女じゃダメかな?」
「………え?」
何を言っているのかが分からなくて、混乱してしまう。
「ごめん、驚かせちゃったかな?」
くしゃくしゃと頭を撫でられる。
色んな思いがこみ上げてきて、泣きそうになってくる。
「小説の感想を話すって誘ったけど、
本当は今日告白するつもりだったんだ。
だから、ちゃんと言わせてほしい。」
空くんが改めて私を見る。
胸がドキドキして、少しうるさい。
「好きです。俺と、付き合ってください。」
こういう時は、なんて答えるのが正解なんだろう。
「……私も、好きです。」
空くんを初めて知った頃の自分に、
この事を話したらどんな反応をするのかな、
きっと、信じられない…気がする。
今も何となく信じられないけれど、
その嬉しそうな笑顔を見れば、嘘じゃないって分かるよ。