第73章 【人気者】×【友達】
「雨衣っ、おはよ!」
爽やかに笑って私に挨拶をしたその人は、
クラスの人気者で。
どうして私と仲良くしてくれているんだろう。
なんて前はいつも考えていたっけ。
「蒼依くん。おはよう!」
けど、今はもう考えなくなった。
いつの間にかそんなことどうでも良くなっていた。
誰とでも仲良くなれてしまうから、
人気者なのかもしれない。
「小説、読み終わったんだ。貸してくれてありがとう。」
そう言って渡されたのは貸していた恋愛小説だった。
まだ持っていても良かったのに。
なんとなく繋がりがなくなってしまうようで寂しい。
「それでさ…感想とか話したいから
今日の帰りまた一緒に帰ろう。」
「……でも、申し訳ないよ。」
嬉しいけれど、帰り道が違うのに一緒に帰ったら
また遠回りさせてしまう。
「大丈夫だって、俺も駅に用事あるから。」
そこまで言われてしまったら断る理由もない。
「そっか、わかった。」
「うん。」
本が返されてしまったら、
もう話すことも無くなってしまうのかな?
帰りになるまでソワソワして、
なんだかまたネガティブなことを考えてしまう。
どうか、明日からも君と普通に話せますように。