第71章 【犬系生徒】×【卒業】
「先生、探しましたよ。」
やっと見つけた。と小さく呟いて後ろから私を呼ぶ。あれから月日が流れ、卒業の日。
覚悟は決めていたけれどどこか少しだけ怖くて。
臆病な私はほんのちょっとだけ彼から逃げていた。
でもすぐに見つかってしまったみたいだ。
後ろを振り向くと、彼はいつか素敵だと言ったその笑顔で私を見ていた。
「もう卒業だね。」
そう言うと彼は改まった顔でもう一度私に言った。
「先生の事が好きです。」
その目は力強くてあの日よりずっと眩しく思えた。
「……俺の気持ちは変わらなかったけど、
先生の気持ちも変わらない?先生にとって俺はいつまでも生徒のまま?」
あの日から、考えないようにしていたつもりだった。でも気が付けば考えてしまっていた。
いつの間にか彼のことばかりで。
私の気持ちはすっかり変わってしまった。
「もう、生徒として見れなくなっちゃったみたい。」
私の言葉にぱぁっ、と嬉しそうに笑った。
「本当?じゃあ、恋人にしてくれますか?」
優柔不断な私はまだ悩んでいた。
元生徒と恋愛するのは、それなりに考えてしまう。
いつか飽きられてしまうかもしれない。
彼はそんな子じゃないって分かっているけれど…。
彼はどうやら私の気持ちに気が付いたらしい。
「ずっと好きだったんだから、飽きたりなんかしない。…俺、今日が来るのをずっと待ってたんだよ?」
「もしもまだ生徒のままだって言われたら、諦めるつもりだった。けど生徒として見れなくなったなんて言われたら、諦められない。」
なんだか彼を見ていたら信じてみたくなってしまった。もし。もしも、他に彼に好きな人が出来てしまっても、
私はこの選択を後悔したりなんてしない。