第70章 【ヤンデレ】×【依存気味】
付き合ったばかりの頃、
空が言ってた事を思い出す。
『おれ、欲深いから。
雨衣のこと困らせちゃうかも。』
その時もなんだか悲しそうな顔をしていた。
「欲深いってこういうこと?」
「……うん。そう言ったの覚えてたんだね。」
そう言うと下を向いてしまった。
悲しそうに見えたのが気になって、はっきり覚えてる。
あの時は欲深いと聞いて色々考えてしまったけど、
結局全然欲深くなんてなかった。
「もうとっくに好きになってるよ。
他の人のこととか興味無いから。」
「本当に?」
表情は見えないけれど、
多分まだ不安そうな顔をしてるんだろう。
「嘘なんて付かないよ。」
そう伝えると、照れたように笑う声が聞こえて。
ほんの一瞬にして、
抱きついたまま押し倒されてしまった。
「誕生日プレゼントを買いに行っちゃう分、
一緒に過ごす時間が減っちゃうじゃん?
……だから、行かせない。」
ニヤニヤと笑って、楽しそうで。
心配して損したかも………なんて。
行かせないなんて言われてしまったら行けない。
それに多分、このままじゃ1時間後にも離してくれない。
手をぎゅっと繋がれて、深いキスをされる。
「ッ……んん…!」
外がまだ明るいのがなんだか恥ずかしくて、目を瞑る。
「だめ。目開けてよ、何も気にしないで
俺の事だけ見てればいいから。…それでも嫌?」
「……ううん、」
ゆっくりと目を開けると空はふわり笑った。
「おれ、もう誕生日プレゼント貰っちゃったから。
誕生日の日、隣にいてくれれば十分だよ。」
そう言うけれど、私にはなんのことかさっぱりで。
「どういうこと?」
なんて聞いてみるけれど、
「知らなくてもいーの。
そんなことより今は俺に集中しててよ。」
はぐらかされちゃって。
でもあまりに楽しそうで嬉しそうだったから、
―いい、のかな?