第69章 【執事】×【お嬢様】
「私が死ぬまで執事で居なくちゃならないなんて、
絶対におかしいわ。」
と、お嬢様は怒っていた。
昔から不思議なお嬢様と言うことは知っていたけれど、
今日は突然どうしたのだろう。
「お嬢様?」
きっとあの方から聞いたことなんだろう。
昨日の夜から怒っていたのはそれが理由か……。
「私、黙って居られないわ。お父様に話してくる。
でも、1人で行くから大丈夫よ?
貴方は…そうね!ケーキが食べたいかも。」
「はい、用意しておきますね、」
お嬢様は、強い人だ。
俺はお嬢様には必要ないんじゃとたまに思う。
ケーキの用意を終わらせ、お嬢様の所へ向かう。
来たらお嬢様は多分怒ってしまうから、
こっそり近くで話を聞いていた。
「無理だ。それは出来ない。」
どうやらやっぱり断られてしまったようだ。
それは昔から決まっていることで、今更変更なんて出来ない。
「どうして!?嫌なの!」
「無理だと言ったら無理だ。諦めなさい。」
そう言った途端、お嬢様の声がしなくなる。
きっと諦めたのだろう。あの人は怒ると怖い。
お嬢様は数秒後には部屋から出て来るだろう。
俺はそっとその場から離れた。
「はぁ……」
やっぱり、落ち込んだ様子でお嬢様はすぐ戻ってきた。
知らないフリをして、お嬢様に話し掛ける。
「ケーキを用意しておきましたよ、お嬢様。」
お嬢様は、いつものように
ケーキに目を輝かせたりはしなかった。
「お嬢様。俺が頂いてしまいますよ?
……あぁ、それとも食べさせて欲しい?」
冗談を言ってみる。
顔を真っ赤にして怒ると思ったのに、
お嬢様は口を開けた。
「…わかりました、」
お嬢様の1番好きなケーキを少しスプーンで掬って、
1口、そっと口に運ぶ。
「んっ、」
もぐもぐと美味しそうに食べる。
いつの間にかお嬢様は、笑顔へ変わっていた。
「満足ですか?」
「ううん、もっと、」
強いなんて言ったけれど、実はそうでも無いみたいだ。
珍しく甘えてくるお嬢様は、可愛らしい。
「……本当に、可愛らしいですね、」
突然お嬢様の顔が真っ赤になる。
「お嬢様?」
「い、今…可愛いって…」
自然と声に出してしまったらしい。
「思ったことを言ったまでですよ。」
そう答えたら、真っ赤な顔をしたまま俯いてしまった。