第68章 【優等生】×【意地悪】
「先輩が好きです!私と、付き合ってくれませんか、」
先輩に告白をした。
ずっとずっと好きな先輩だった。
「……嬉しいな、よろしくね?」
ふわりと柔らかく微笑む先輩。
驚いて、信じられなくて。
初めての恋なんて上手くいかないと思っていたから。
でも、先輩が嘘をついているようには思えなくて、
だから嬉しかったんだ、その時は。
喜んでいた私を見て先輩は、
にやりと、悪戯っ子みたいに笑った。
「……付き合うからには言うこと全部聞いてもらうから、覚悟しとけよ、後輩ちゃん。」
「え?」
どうやら私は、先輩に騙されていたらしい。
「あの、先輩…ですよね?」
「違う奴に見える?」
じっと先輩を見るけれど、先輩はちゃんと先輩だ。
私の告白した相手は確かに先輩であっている。
「違く、ない…です。」
「それは良かった。」
そう言って笑う先輩はやっぱり私の好きな先輩だった。
「折角だし、一緒に帰るか。」
自然に手を取られ、先輩と手を繋ぐ。
多分これって……恋人繋ぎ?
驚いて先輩を見るけれど、先輩は全く気にしてない様だった。
目が合うと、ふっと笑われる。
「こんなんで赤くなっちゃうんだ?かわいいっ、
………あ、もっと赤くなった。」
自分でも分かってる。
でも、止めたくても止められない。
それどころか顔は熱を増すばかりだ。
「ほんっと、かわいい。」
先輩がぐっと近づいて、ちゅ、と音がした。
頬にキスされたと気がついたのは、ほんの数秒後。
先輩が近づいた時の一瞬期待してしまった自分が居た。
唇にされると思ってしまったのが恥ずかしい。
「…ずるいです。先輩、」
少しがっかりしてしまったことなんて知られたら
呆れられてしまうかな。
ひとりモヤモヤしている私に先輩は言った。
「期待した?」
「…はい。」
バレてしまっていたけれど、先輩はどこか
楽しそうに見えた。
「ごめんごめん」
先輩は謝りながらも、全く反省してなさそうだ。