第64章 【浮気相手】×【最低な恋。】
「蒼依?ねぇ、戻って来ちゃう、」
「別にいいじゃん。見つかったって。」
私は最低な恋をしている。
最低で最悪で、冷たい恋。
「…………っ」
首に吸いつかれ、ちゅ、と小さく音がする。
少し痛くてくすぐったくて声が出てしまいそうになる。
「………ん、付いた。」
その場所をそっと撫でた後、触れるだけのキスをした。
キスマークなんて付けて、なんの意味があるんだろう?
私の事なんて、
彼女の親友くらいにしか思ってないくせに。
こんな最低な人のどこを好きになってしまったんだろう
こんな男を好きになって、言いなりになって喜んでいる
私も最低な人間だ。
親友は大切で、大好きなのに。
どうしてこうなってしまったのか。
「ねえ、こんなところに付けないでよ。」
鏡で場所を確認すると、それは、
少し服の位置がズレれば簡単に見えてしまう所にあって
あの子は勘が鋭いから、キスマークを見られたら直ぐに
バレてしまうかもしれない。
「そこまで気が付かないって。」
見つかるのは怖いけれど、
それと同時にどこかでそれを望む自分も居た。
どうか見つけて、辞めさせて欲しいと思う自分も居た。
トン、トン、と階段を上ってくる足音がする。
ゲームに負け、飲み物を買いに行った親友が戻ってくる
ほんのちょっと乱れた服を直して、
自分の居た場所に戻る。
「服、そのままで良かったのに。」
「良くないよ、バレたらどうするの?」
「どうもしないけど」