第63章 【素直になれない二人】×【モヤモヤ】
突然蒼依が私に言った。
「やっぱり俺、さっきの子と帰るから。」
こんなにモヤモヤさせといて、呑気な奴だ。
そんなこと、一々私に言わずに
勝手に行ってしまえばいいのに。
「…そ、じゃあね。」
「本当にいいわけ?行っても、」
じと、と私を見る。
さっきの子と蒼依が一緒に帰る姿を想像すると、なんだかお似合いに思える。
「………うん、お似合いじゃん、」
なのにどうして、こんなに苦しいの?
「…じゃあ行くから、」
蒼依がどんどん行ってしまう。
鞄を持って、あの子の方へ。
このままあの子と一緒に帰って、どんな話をするの…?
私は、一人で帰る?
……そんなのいやだ、
「待って!」
蒼依と一緒がいい。
蒼依の隣は、あの子じゃなくて私がいい。
「行かないで、」
私がそう言った瞬間、嬉しそうな顔をしたように見えた
「最初から行くつもりなんてねーよ。」
「騙したの?最悪、大嫌い、」
「!?」
さっきあんなにイライラした理由は、心のどこかで
ほんと少しだけ、多分気が付いているけれど。
ちゃんとこの気持ちに気が付くのは、
まだちょっと先でいいかな。
今はまだ、この関係のままがいい。
「うそ、嫌いじゃない…っ」
「……はぁ。」
「(素直になれよバカ。なんて、俺もだけど)」