第62章 【魔法使い?】×【お兄さん】
「私……」
「なんてね。どうだった?意識してくれた?」
ふわ、とまたいつもみたいに笑う。
あんなにドキドキした時間を返して欲しい。
あまりにドキドキしてしまって、
相談していたことを忘れていたくらいだ。
「やっぱり空さんは魔法使いです。
……もっと好きになる魔法を、簡単に掛けてしまう。」
「?」
きょとんとした顔をして。
空さんは分かってない。
「私には魔法は使えません。
……だから、当たり前だけど魔法には頼りません。」
何を言ってるんだろう、と自分でも思う。
空さんは
相変わらず優しく微笑んで、また話を聞いてくれる。
こんな馬鹿で子供みたいな私をバカにして笑わない。
暖かい笑顔で見守ってくれる。
「………空さん、好きです。」
「私の事、ちゃんと恋愛対象として見てください。
返事は今じゃなくていいから、
せめて意識してくれませんか。」
空さんは、
ここまで言わないときっと伝わらない。
暖かい笑顔は、びっくり顔に変わっていて。
やっぱり私の気持ちに気が付いてなかったみたいだ。
「……うん。
返事はそのうちちゃんとするから、待ってて。」
少し笑って空さんは言った。
なんだか、不安も恐怖も後悔も何も無くて。
ただただスッキリしたような、
解放されたような気分だった。
きっとこれは、空さんの力で。
「ありがとうございます。空さん。」
やっぱり空さんは
私だけに効果のある魔法使いなんだとぼんやり思った。