第61章 【お隣さん】×【運命?】
「……こんにちは。
隣に引越して来たんで……これ、良かったら。」
初めての恋は一目惚れだった。
初めてだったのに、一瞬だったのに。
それが恋だと気が付けたのは、どうしてだろう?
「運命、だと思う。」
眠そうな顔でぼんやりしている親友に話すと、
笑わずに私の話を聞いてくれた。
「じゃあ告白してみたら?」
「えっ、それは引かれちゃうんじゃ…」
「引かれたならそれは運命じゃないんじゃない?」
「……そっか、そういう考え方もあるか…」
それは確かにそうかもしれない。
けど突然一目惚れだなんて言って、本当に大丈夫かな、
「まあ、頑張ってよ。」
親友はどこか様子を見て楽しんでるように見えた。
「あ。」
噂をすれば。家に帰る途中で、偶然その人と会った。
昨日も思ったけれど、制服だから高校生なんだろう。
うちの制服ではないから、同じ学校じゃないけど。
「こ、こんにちは。」
「…こんにちは」
目的地は同じ、歩くペースも似ていてなんだか気まずいきっとタイミングは今なんだろうけど、勇気が出ない。
―頑張れ、自分。
「あの、!」
「…はい?」
「お名前、なんて言うんですか?」
名前が分からなきゃ何も出来ないから。
「蒼依。そっちは?」
「!!…雨衣です、」
「…そう。」
どうしよう…会話が続かない。
こんなんじゃ告白なんて到底無理だ。
ふと、昨日貰ったものを思い出す。
「昨日、紅茶ありがとうございました、
美味しかったって母が喜んでました。」
ありがとう。と母に感謝する。
「雨衣さんは?」
突然名前を呼ばれそう聞かれ、驚く。
「えっ、私ですか?」
「飲んでない?」
確かに貰って自分も美味しいと思ったのを覚えてる。
でもどうして私に聞くのだろう。
感想を直接聞きたい、とか?
「甘くて美味しかったですよ。」
「それは良かった、」
そう言うと、ふわり笑った。
笑った顔を初めて見た気がする。
言えないけど、少しだけ可愛いと思ってしまった。
家が近付く。
会おうと思えば多分すぐに会えるけれど、
こんなチャンスは他に無いかもしれない。