第59章 【甘々】×【嫉妬】
今日は久しぶりに2人揃って休みの日だった。
折角ゆっくりしようと思っていたのにそうもいかない。
なんなら夕方くらいまで寝ていようかと考えていた。なのに。
「服買いたいから付き合ってよ。」
蒼依は私を叩き起してくる、
起きたくないなぁなんて思いながらも仕方ない。
付き合ってと言うんだから断るのはひどい。
重い瞼を開け、体を起こす。
まあいつもよりは遅い時間だけど、それでも早いことに変わりはなかった。
歯を磨いて顔を洗って、朝ご飯を食べる気にはなれず。
ぼんやりしながら自分の着て行く服を探していると、
体が暑くて重いことに気づく。
……抱き着かれてる?
「服、買いに行けないよ。」
「いい。買いに行くつもりないし。」
その一言で、鋭い私は分かってしまった。
服を買いに行きたいなんて嘘で、ただ私を起こそうとしただけなんだと。
この人は確かにそういう人だった。
「行かないなら寝るよ?」
ベッドに戻ろうとしたけれど、
そんな私を蒼依は離してはくれない。
「二度寝は良くないよ」
そうは言われても起きていてもやることは無い。
「起きてる必要ないでしょ。」
「寂しいじゃん、癒してよ。」
癒しを求められたところで癒されたいのは私の方だ。
でも今の私を癒してくれるのは、睡眠だけなのだ。
「蒼依にとっての癒しって…例えば何?」
「雨衣」
一点の曇りもない笑顔で即答するから私が折れるしかない。
結局私は蒼依に弱いらしい。
「……わかった、わかったから離して。」
ずっと同じ体勢はキツいし大体重い。
眠らせて欲しいとは言わないからせめて座りたい。
「……じゃあ、手繋いでていい?」
ん。と手を出してくる。
私、どうしてかこの手が好きなんだよなぁ…なんて。
いつもはこんな感じじゃないのに、どうしたんだろう。
何かあったのかなと心配になる。
そう思ったらその表情も寂しそうに見えて、
断ることなんてできなかった。
「…わかった」
繋いだ手は暖かくて、
自分の手が冷たくてなんだか申し訳なかった。