第57章 【喧嘩ばかり】×【幼馴染】
…そう、思ってたのに。
一人でいる時もずっと蒼依のことばかりだ。
思えば最近、蒼依のことを考える時間が
増えているかもしれない。
友達に聞いたら恋だとか言われるし。
これが恋なんて、絶対認めない。
「なんで私があんな奴…」
「昨日の答え、聞いてないけど」
会って早々、顔が近い。
なんだか恋と言われてから余計に意識してしまう。
「どんな人かなんてわかんないし、」
それに。
「ねえ、なんでそんな食いつくの?」
そう聞いた瞬間、またひとつ。距離が縮まって。
― 0cm。柔らかな感触がした。
「っ、え。」
「雨衣が好きだから。って言ったら?」
嘘だ、全然そんな様子なかったじゃん。とか、
ずるいとか、色々言いたいのに。
言葉が出てこなくて。
キスされたのに、好きだって言われたのに
嫌じゃなくて。むしろ―
「……私、なんでこんな嬉しいんだろ。」
「なんでだと思う?」
心のどこかではもう、とっくに気が付いてて。
ずっと気が付かない振りをしてたのかも知れない。
『もう、素直になっちゃえばいいのに。』
友達の言葉を思い出す。
心臓の音がうるさい。
…ああ、これが恋だったんだ。
どうして今まで素直に認めなかったんだろう。
「好き、だから」
そう言ったあと、すぐに恥ずかしくなって
顔を逸らしてしまった。
「………うん。」
蒼依の方をゆっくり見ると、顔が真っ赤で。
少しだけ笑ってしまった。
「…笑うなよ、」
怒ってるはずなのに、怖くないし。
それがなんだか余計におかしくて、
「あんまり笑ってるともう1回するけど。」
さっきの出来事を思い出してしまう、
私今、絶対顔赤い。
「もう笑わないんだ、残念。」
「…やっぱしていい?」
「……うん、」
さっきよりも顔が熱くなっていくのがわかる。
たった少しの時間だけど、さっきと関係が違う。
状況だって違ってる。
もう。幼馴染じゃなくて、恋人なんだ。