第56章 【王子みたいなひと?】×【デレデレ】
「蒼依って王子様みたい。」
ふと、そんなことを思った。
蒼依は小さく笑って、そ?と首を傾げた。
なんていうか、すぐに恋に落ちてしまうような。
そんな雰囲気がある気がする。
「…じゃあさ。」
けど、王子様っぽくない所だってあって。
「俺が王子なら、雨衣は姫でしょ?」
…うん。こういう所。
別に、これだけだったらいいんだけど。
こういうことだけじゃなくて。
いつも誰かと会う度に、「今日は何話したの?」
なんて聞いてくる。
大した話なんてしていないのに。いつもこうだ。
王子様みたいな蒼依に似合う女の子は、
私以外にいるはずなのに。
「私は姫じゃなくて…従者ってとこかな?」
それにどう考えても私は、
姫なんて呼ばれるようなタイプの人間じゃない。
蒼依の方を見るとなんだかムスッとした顔。
もしかして怒らせちゃったかな。
「俺にとってはお姫様なの。分かった、?」
分かったかと聞かれても、
なんて答えていいかも分からずで。
「…なんかありがとね。」
何となくお礼を言うと、
「なにそれ、」
って小さく笑った。
「俺ね?…本当は少しだけ怖いんだ。」
少しして突然そんなことを言い出す。
「俺のお姫様が誰かのお姫様になっちゃいそうで。」
思いもよらない言葉にびっくりして、
ぶんぶんと首を振る。
「そんなことないのに、」
蒼依よりいい人なんて見つかるわけない。
そう思いながら否定する。