第54章 【女子力高め彼氏】×【自信の無い彼女】
距離が縮まって顔が近くて、
「なに、怒ってるの、?空?」
さっきより、ずっと怒ってる。
「俺、お前に可愛いって言われるの嫌なんだけど。」
「え?」
「俺の事ちゃんと男として見てる?」
こういう空気、ちょっと苦手だ。
「…見てる、けど。」
逃げられない。
いつの間にか距離は0センチ。
「っ、!?」
可愛いなんて言ってしまったことを後悔した。
上手く息が続かなくて、苦しい。
「ん…っ…はぁ、」
離れてから息を整えていると空は余裕そうに笑った。
「もう疲れちゃったの?早いなぁ…。
ちゃんと俺が男だってこと分かってもらうまで
辞めないから。」
なんのスイッチが入ったのか、そんなことを言い出す。
「ごめ、「いいから黙ってて。」」
言葉を遮られ、可愛いと言ったのを謝ることも
出来なくて、また口を塞がれて、
逆らうことも出来ずにされるがまま。
さっきまでクッキーを作ってた可愛い空は
もうどこにも居なくて。
やっぱり男の子なんだと、改めて知らされる。
「もう分かったから…っ、」
「俺からしたら雨衣の方が可愛いけど?
…今のその焦った顔とか。」
私もあまり言われるのは得意じゃないかも知れない。
なんというか、むず痒い。
「可愛くないから…!」
「さっきの仕返しっ、」
べ、と舌を出して悪戯っぽく笑う。
「でも、雨衣の方が可愛いって言ったことは嘘じゃないから。」
「…な、っ。」
「いつも可愛いって思ってるよ。
…だから、続きしよっか。
俺、今日は辞める気ないし。」
ふふ。っと笑う様子は、
天使が突然悪魔に変わってしまったみたいで。
可愛いなんて言ってしまったことを改めて後悔した。