第52章 【穏やか】×【癒し】
「…泣いてもいいから。」
優しい声に、我慢していたのが出来なくなってしまう。
失敗しても良いって言うけれど、それでもやっぱり失敗した時には落ち込んでしまうわけで。せめて心配はかけないようにと思っていたのに。結局また同じだ。
「……ごめん。」
「さっきから謝ってばっかり。
俺の事は気にしないでよ。全部好きでやってることだから。」
「俺にとっては、雨衣が居てくれるだけで幸せだから。」
ふふ、と照れくさそうに笑う声につられて私も笑ってしまう。
「…あ、笑った。」
離されて、目線が合う。
泣いていた顔を見られたくなくて、ゴシゴシと目を擦った。
「擦ったら、余計赤くなっちゃうでしょ?」
もう。と怒ったように言うけれど怖くない。
「……嫌なことは、俺が忘れさせてあげる。」
安心するような笑顔で、そう言って私の頬を撫でた。
その手は暖かくて心地が良くて、本当に嫌なことを忘れられそうで。
私は空が居ないとダメかも知れない。なんて、そんなことを思ってしまう。