第52章 【穏やか】×【癒し】
「はぁ…。」
先程の失敗を思い返しては溜息が出る。
…どうして私はいつもこうなんだろう、と何度も考えてしまう。
「ただいま、」
そう呟いて家に入る。
家に入ると安心するのか少しだけ泣きそうになったけれど、我慢。
リビングに行くと聞こえたのは優しくて暖かい、大好きな声。
「おかえり。」
その声を聞いただけで、その顔を見ただけで、こんなにも安心するなんて。
空にはそういう力があるのか、私だけなのか。
「夕飯作っておいたから、食べよう。」
「折角の休みなのにごめんね…ありがとう。」
そう言うと、ふわり笑った。
「いいのいいの、暇だったし。」
「…そっか。じゃあ、先に着替えてくるね。」
着替えが終わると、どこからか良い匂いがしてくる。美味しそうな匂いだ。
「美味しそう…ってあれ?」
テーブルの上には二人分の料理。遅くなったのに待ってていてくれたのだろうか。
「食べてなかったの?」
「うん、今から。」
空だってお腹空いてるはずなのに…
「なんかごめんね、」
「ううん。1人より2人で食べる方が美味しいでしょ?」
「…うん。そうだね。」
―きっと、私は空のこういうところが好きなんだろうな。
「ごちそうさま。美味しかった、ありがとう。」
そう言って空を見ると、 空は心配そうな顔で私を見ていた。
「…今日、なんかあった?」
「!」
気付かれていたなんて思わなかった。上手く隠せていると思っていたから。
「何もないよ。」
心配は掛けたくなくて、出来れば言いたくない。
「嘘は良いから、話して?」
そんな願いはあっさり砕け、簡単に嘘だとバレてしまった。
「……なんで、」
「顔見れば分かるよ。」
こういう時、鋭くて困る。
「…なんか色々失敗しちゃって、何やってもダメで…。」
話していると思い出して泣きそうだ。
ダメだ。泣いちゃ。
そう思って下を向くと、ぎゅ、っと抱き締められる。
「空?」
暖かくて落ち着くと同時に、気が緩んで視界が滲む。