第47章 【浮気性】×【喧嘩】
「……もしもし?」
「…うん。…会って、話がしたい。」
昨日喧嘩をしたあの場所で、明日俺達は待ち合わせをした。
早く出てきたせいで、待ち合わせ場所には少し早くに着いてしまった。
と、思ったのに。
彼女は俺より早くそこに居た。
「雨衣。」
名前を呼ぶと彼女がこちらに振り返る。
いつもは待ち合わせ場所で会うとふわり嬉しそうに笑う彼女は、今はどこにも居なくて。
彼女は真剣な顔をしていた。でも目が少しだけ赤い。きっとずっと泣いていたんだろう。
「…ごめん!俺、全然雨衣の気持ちなんて分かってなかった。」
頭を下げる。
「雨衣が好きだよ。でも、愛されたかった。なんて言い訳にしかならないけど、でも。本当に、俺が好きなのは雨衣だけなんだ。」
言いながら自分でも、改めて最低だと思う。
「…その言葉、もう何度も聞いたよ。みんなに同じ事言ってるの?」
静かな怒りと悲しみが混じった声で、俺に言った。
確かに、色んな子と連絡を取ったり出掛けたりした。
でも、ハグもキスも愛を伝えるのも他の子にはしていない。手を繋いだことすらない。
「言ってない。本当に、他の子と友達以上の関係になったことなんて無いよ。」
求められても、いつも断っていた。
「これからはちゃんと、他の女の子と連絡とるのも出掛けるのも辞める。」
「…そんなの、嘘だ。」
当たり前だ。今までも何度もそう言って結局同じ事の繰り返しだったんだから。
だから、
「女の子の連絡先、全部消したんだ。」
携帯の画面を見せると、彼女はびっくりした顔で俺を見た。
「…え?」
「なんでそこまでして…」
「今度こそ、本気だから。」
そう言うと、彼女は今度はぼろぼろと泣きながら言った。
「私じゃ愛が足りないんじゃなかったんじゃないの?
愛されたかったなら、もっと愛してくれる人を探せば良かったじゃん!
「…私だって、大好きだったのに…」
彼女の声は少し震えていた。
彼女からこんなにも愛されていたなんて。
それを見ようとも、気付こうともしなかったのは俺だったと。
「ごめん…、俺が馬鹿だったんだ。」
泣きじゃくる彼女に、俺はただ謝るしかなかった。