第42章 【先生】×【生徒】
「教えて、くれませんか。先生。」
私がそう言うと、蒼依先生はそっと私の頭を撫でた。
「また今度な。」
そして困った様に笑って、そう言う。
先生は、ずるい。
そうやっていつも、私から逃げる。
私はずっと貴方が好きなのに。
「…先生、ここが分かりません。」
最初はただ、勉強でわからない所があった。
それを教えてもらうために色々聞いていたりしていた。
「お前は勉強熱心だな、俺も見習わないと。」
「…ふふ、何言ってるんですか。」
普通に勉強を教えて貰っていて、偶に関係の無い話もしたりして。
恋愛感情なんてなかったはずだった。
でも、いつの間にか私は先生を好きになっていた。
気付けば私は一日中ほとんどの時間、先生のことを考えていた。
そのことに気がついた時、私は先生に告白をしてしまった。
「好きです。恋愛感情で、先生の事が。」
先生は困った顔で私を見た。分かっているけれど、やっぱり辛い。
「……ごめんな。」
小さく言ったその言葉を、私は聞き逃さなかった。
それでも私は、諦める事が出来なかった。
「また、勉強教えてくれませんか。」
勉強を教わる振りをして、先生に近付いた。
でも、それに気が付いたのか先生は勉強を教えてくれなくなってしまった。
先生に勉強を教えて貰える時間が、私の楽しみだったのに。
先生と生徒なんて関係ない。私は、先生の本当の気持ちが知りたい。
「…どうしても、嫌ですか?」
また今度、なんて曖昧な言葉じゃなくて。嫌なら嫌とはっきり言って欲しい。
「本当は、勉強じゃない。私は、先生の事が知りたいんです。」
静かに、時が流れていく。
「…俺はただの教師だよ、」
先生の答え。それが何を意味するかは、馬鹿な私にも分かった。