第41章 【病気】×【悲恋】
それから数日後、私がつまらない日々を過ごしていると、私宛に一冊の本が届いた。
それは、空からだった。
「…なんで、」
その本は私が前に、空に頼まれて買ってきた本だった。
本を開くと、何かの紙が下に落ちる。
私は拾って、その紙を読んだ。
「…!これ、空の字だ…」
“ どうか僕のことは忘れて、雨衣は幸せになってください。 ”
と、たったそれだけだった。
嘘だ。本当は、忘れてほしいなんて思っていないはずなのに。
前に2人でこんな話をしたことがあった。
「…入院してる時って、やっぱり怖い?」
病院に行くのが少しだけ怖かった私は、聞いたら困らせるだけだと分かってるのに、空にそんな事を聞いてしまった。
本当は、聞くつもりなんてなかった。なんて、そんなの言い訳にしかならないけれど。
でも空は、嫌な顔一つせず、静かに答えた。
「ううん、入院してる時は怖くないよ。雨衣だって、来てくれるから。」
「…でも、みんなから忘れられるのは怖い。いつか僕が本当に消えてしまうのは、嫌だな。」
人間が本当に死ぬのは人から忘れられた時だと、誰かから聞いた。
きっと空は、その事を言っていたんだろう。
あれは、本当だった。だってあの時は、嘘を吐く時の癖が出てなかったから。
きっと、私が空の事を覚えていたら幸せになれないと思っているのだろう。私だって、空のことを忘れたくなんかない。
「…絶対、忘れないよ。」
1人、そう呟いて、私は貰った本を読むことにした。
本の内容は好きだった人を失った一人の少女のお話だった。