第37章 【我儘王子】×【真面目女執事】
「―蒼依様。朝です、起きて下さい。」
「…嫌だ。」
いつもはすぐに起きるのに、今日は中々起きようとしない。
「あの方に会うのが、嫌ですか?」
「…うん。」
あれから二年が経ち、18歳になった王子は月に1度、とある所の姫と会うようになっていた。
それは、互いの結婚の為に。
「結婚…したくない。」
重い口を開いて、王子は言った。
「そう、ですか。」
「では、会って帰ってきたら…何かご褒美なんて、どうですか?」
「なんて、もう子供じゃないんですから、そんなの「―分かった。」
「…え?」
訂正しようとした私の言葉を遮って王子は言った。
「ご褒美、くれるんでしょ?」
「あ…はい。」
「じゃあ、行く。」
さっきまでは嫌そうだったのに、突然やる気を出す。
「では、私は廊下に出ていますね。」
何はともあれ、行く気になってくれて良かった。
「―では、行ってらっしゃい。」
その場所へは私はついていけない。
王子は悲しそうに笑った。
「うん、行ってくる…待ってて。」
「はい。」
王子が不安にならないように、私は笑って見送った。
王子が居ないと少しだけ寂しいような。
今頃、どんな話をしているのだろうかとか、そればかり気になってしまう。
そんな感情を抱いてしまうのはいけないことだと分かっている。
でももう、私には遅かった。