第37章 【我儘王子】×【真面目女執事】
私が忠誠を誓った王子様は、ワガママな人だった。
いつも勝手で、自由で。そんな王子の命令を、私が拒否する事は出来ない。
「全然眠れない。眠れる様に何かしてくれない?」
「寂しいんだけど…俺の隣に来てよ。」
「はい。分かりました。蒼依様。」
色んなことがあったけど、命令を嫌と思った事は1度も無かった。
私は王子に仕えているうち、抱いては行けない感情を抱いてしまっていたのだから。
初めはなんとも思ってなかった。
王子は聞いていた通りの人で、大人しくて、静かで。
ワガママなんて1度も聞いたことがない。
でも段々、私も王子も変わって行った。
「坊っちゃん。朝ですよ。起きて下さい。」
「…分かってる。…準備、するから。」
「はい。では、私は廊下に出ていますので。終わったらお呼びください。」
「…うん。―あと、その坊っちゃんって呼び方変えてよ。…何か嫌だ。」
「では…ご主人様、とかですか?」
「それもちょっと。名前でいい。」
「分かりました。…では、これからは蒼依様とお呼びさせて頂きますね。」
仕えてからずっと坊っちゃんだったから最初はあんまり慣れなかった。
その呼び方はずっと昔から嫌だったのか、それとも嫌だと思うのは大人になった証拠なのか。
―後者なら、それほど嬉しいことはない。
いつしか私は、5歳しか年齢の変わらないこの王子の成長を楽しみにするようになっていた。
まるで子を見守る親のように。