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色々彼氏 。【短編集】

第36章 【片想い】×【秘密の関係】



「まさか、こんな短期間に会うとは思わなかったなぁ。」
「それはこっちのセリフよ、呆れたわ。」

「その割には急いで来てくれたんだ?」
「余りに可哀想だったから。」


「それはどーも。……雨衣はさ、なんで俺に愛想尽かさないで毎回来てくれんの、?」
じ、と私を見る。その目が何を求めているのか、やっぱり私には分からなかった。

「それは…。」
本当のことを話したらこの関係はどうなってしまうのだろう。
そう思うと、中々言葉が出ない。

「…蒼依のことをずっと好きでいたんだから、
今更そんなことで嫌いになんてなれるはずがないじゃない。」


私には長時間に感じられたけれど、少しの間気まずい沈黙があった。
「は…、どういう、意味、?」
その後びっくりした顔をして、そう言った蒼依の頬は、少し赤く染まって見えた。

「どういう意味って――」

「こういう意味、でしょう?」
余裕そうなフリをして、ぐい、と引き寄せて強引に唇を奪う。
今更こんなこと、無駄かもしれないけど。

蒼依の顔がどんどんわかりやすく赤くなっていく。
それが段々面白くなってきてしまって、思わず吹き出す。

「っ…ふふ、顔、真っ赤。」
「…そっちこそ。」

2人で笑い合う。こんな時間が、ずっとずっと続けばいいのに。


「―俺、ずっと片想いだと思ってた。だから…その、嬉しい。」
そんな顔、初めて見た。

「どういうこと、?」
今度は私が驚く。何言ってるんだ。
だって今までそんな様子…全然無かった。

沢山の可愛い子を見つけて、何度だって色んな人と付き合って。
いつだって私のことは見てくれなくて。
ずっと、私はこんな関係でしか居られないって思ってた。

でも、この関係ではどこか物足りなくて、
それと同時にこの関係がいつ消えてしまうのかが怖かった。


「嘘、でしょ?」
「こんな状態で嘘なんて吐くか。」

「…余りにも信じられなくて。」
「それはこっちこそ。俺意外と一途なんだから。」


「女遊びしてた男が何言ってんだか、」
「それは、雨衣が振り向いてくれないから、でしょ、」

さっきまで、いや、ずっと怖かった気持ちは、一瞬にしてどこかへ行ってしまった。


数え切れないほどに交わしたはずの口付けが、なぜか今日は特別に感じた。
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