第32章 【クラスメイト】×【人気者】
「…おはようございます…。」
教室へと入って行くと、すぐ空くんと目が合う。
逸らそうとしたけど、それはその言葉によって阻まれてしまった。
「あ!市倉、おはよ!」
「え?」
元気よく声をかけられ、少しだけ恥ずかしいような。
「お、おはようございます…。」
私もそっと挨拶を返した。
「市倉!帰り、駅まで送るよ。」
「…え?」
空くんに驚かされるのはこれで何度目か。
ここまで私に話しかけてくるなんて。少し嬉しいけれど…正直良く分からない。
複雑な思いのまま、断るのも苦手な私はそのまま一緒に帰ることにした。
「…。」
「~♪。」
2人きりの帰り道というのは、すごく気まづい。
何を話すべきか、とすごく悩む。多分そう思ってるのは、私だけだろうけど。
「…あの!空…くん。」
「ん?」
「どうして私に話し掛けてくれたんですか?」
やっぱり、それは少し気になる。
私が聞くと、突然空くんは顔を真っ赤にして焦り出す。
「…え、?そ、それは…」
「?」
「…その、市倉の事、ずっと気になってたから。
最初に一目見た時からもっと知りたいと思ってて。…だから。」
真っ赤な顔で、私にそう言う。
「そ…そうだったんですか、」
思ってもいなかった理由とその反応に、こっちまで顔が赤くなってくる。
私に話し掛けた理由がそういう理由だったなんて。本当に驚きだ。
「…うん。…あ、駅着いたし、俺はこの辺で。また明日な!」
「はい!…あ、ありがとう!」
駅を見れば、私に元気よく手を振って、学校の方向へと帰って行く。
…そう言えば空くんの家は、学校に近いんだったっけ。
私を送るために態々駅まで一緒に行ってくれたのか、
空くんには本当に、申し訳なさと大きな感謝しかない。
それと同時に、空くんがもっと知りたいと言ってくれた事と
〝 また明日 〟 の言葉に 少しだけ喜んでいる自分も居て。
もしかしたら、
あの大好きな小説と、どこか少しだけ自分達は似ているのかも知れない。
一人、その日の帰りも嬉しい気分のまま。
___きっと明日も、良い日になるはず。