第2章 静かの海で
それは梅雨も明けぬ夜半過ぎ。
風は少しひやりとしながらも、雨上がり特有の土の匂いと湿り気を運んでいる。
内番やら出陣やらでなかなか捗らずにいた研究をひと段落させ。
俺はもうすでに眠ってしまっているだろう兄弟達の待つ寝室への帰路についていた。
廊下には俺一人のきしきしと軋む足音一つ。
そのまま寝室へと続く廊下を道なりに進んだところで、縁側にぽつんと足をぶらぶらさせながら座る小さな影を見つけた。
不審に思い近づけば、その小さな影は俺の気配に気づいたのか、薄暗がりの中ふっと視線をこちらに向けた。
「ん…?薬研?」
「っと、その声は大将か?」
そう問いかければ。
むっとした返事が返ってくる。
「もう!二人きりの時は大将じゃありませんー!」
「おっと、そうだったな」
「ちゃんと呼んで?」
「あー…、とわ……」
「はい!よくできました!」
満足気なとわの声と笑みが、薄い月明かりの中に綺麗に広がった。