【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第1章 返還の祭典、開幕す。
返還の祭典、開始前夜。
レイアの私室にはヨナが訪れていた。
「いよいよ明日から、か…」
ヨナは先ほどから…というか朝からずっと、心ココにあらずの状態だ。
この台詞もこれで10回以上は言っている。
「ランスロット様は仕方ないとして……エドガーに君を一日中連れまわされるのも正直心配だし、黒の軍なんてもう指一本触れさせたくないのに……ルカ以外は」
「ヨナ……」
ヨナはレイアの両肩を掴み、眉根を寄せて顔を覗き込む。
「明後日は丸一日俺と一緒だけど…その後はしばらく一緒にいられないんだ……心配でたまらないよ…」
「大丈夫だよ、ヨナ」
「根拠のない『大丈夫』なんて口にしないでくれ」
ヨナは苦しそうにレイアの身体をかき抱いた。
頭に添えられた手が、苦しげに髪を絡ませながら掴む。
「もう絶対……君を失いたくない」
「ヨナ……私、どこにも行かないから。終わったら、ずっとずっとヨナのそばにいるから…」
レイアはヨナの背中にそっと手を回し、ぎゅっと力をこめて抱きしめる。
お互いの体温を交換し合いながら、しばらくしてヨナが呟いた。
「そうだ」
「え?」
ヨナが身体を離し、レイアと向き合う。
「この儀式が終わったらすぐ式を挙げる」
「………え…?」
琥珀色の瞳が火花を散らすように光って、決意の固さを物語る。
「決めたから。これが終わったらすぐ結婚しよう」
「え、ちょっと待って…だってついこの間婚約式をしたばかりだし、クレメンス家の皆さんにもちゃんとご準備いただかないと」
「そんなの後からでいい。とにかく……もう二度と君に悪い虫がつかないようにすぐに結婚する」
「……ええええ?!」
レイアはさすがに驚きを隠せず叫んでしまった。
「そうと決まればウェディングドレスを準備しないといけないな…この間贈ったドレスと同じサイズでいいよね?
よし……君も明日はランスロット様となんだから、失礼のないように早く寝た方がいいよ」
「えっ…ヨナ……」
(もう少し一緒に居たかったのに)
ヨナはすっと立ち上がると、一言おやすみ、と告げて早々に部屋を出て行ってしまったのだった。