【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第9章 4th Night【カイル・アッシュ】※R-18
Kyle side--------
シャワーを済ませ、眠りについたレイアを見届けると、カイルは外へ出た。
眠気の来る気配のない夜。
静かな夜だった。
最初の『月小屋の宴』の時から
胸糞悪い儀式だ、と思っていた。
だが、本当の意味で胸糞悪かったのは
そんな状況で、レイアに欲情する自分自身だった。
(俺も……下らねーオスの一人か…)
すっかりレイアの甘い香りが落ちきった自分の手のひらを見つめる。
(この手は……誰かを傷つけるためにあるんじゃねーんだがな…)
どうしても自分が傷つけてしまったような気持ちになってしまう。
「何やってんだかなー……」
酒のない夜はどうも意識が冴えすぎて苦しい。
朝になれば、手に触れたレイアの記憶も消えるのだろうか。
(酒、買ってくればよかったなー…)
ため息を一つつくと、カイルは音を立てないように月小屋の中へと戻った。
「………カイル?」
部屋の暗がりの中から声がする。
「あー…わりぃ。起こしちまったか」
「眠れないの?」
「ん………まーそんなとこだ。お前は気にすんなー」
ベッドサイドの明かりが灯り、夜着姿のレイアが視界に入る。
「カイル、前にここへ来た時、うなされてたよね」
「あ?そうだったかー?」
(……昔の夢でも見てたか…)
時折思い出す、まだ自分が無力だった頃の記憶が微かに蘇る。
カイルはダイニングの椅子に腰掛け、ベッドに背を向けた。
「あのね、カイル」
「……ん?」
「……私、今日少しだけでもカイルのことが知れて嬉しかった」
「………」
「カイルはみんなと違って…魔法や武器は使わないけれど、カイルだけの強さがあるってことが分かったから」
「………っ?!」
ふわり、と甘い香りがカイルを包んだかと思うと
レイアの細い腕が伸びてきて、後ろから抱きすくめられた。
「ほんとは……誰よりも戦ってきてたんだね」
(……こいつは本当に………)
どこまで人の心を揺さぶるんだ。
さらりとレイアの髪が落ちてきて
カイルはそのまま目を閉じながら
後ろから伝わる温もりに、そっと身を委ねた。