第20章 動く2
「ほぅ、確かに珍しい品だ」
「なかなかの品で御座いますね」
呆気にとられている秀吉達をよそに、俺と三成は満足そうな御館様を目に、同じようなことを呟いていた。
「秀吉、光秀、早々にその者の口を割らせろ」
「「 御意 」」
御館様の命により立ち上りかけたその時、吉右衛門の声が響く。
「お待ち下さい!」
「なんだ」
「信長様に顕如を捉えるため、一つご提案がございます」
「ほほぅ、言ってみろ」
「織田の姫様が拐かされたらしいと、うわさを流させて頂きたい」
「何?」
「おい!それじゃあことねが危ない目に…」
「待て、政宗。吉右衛門、続けろ」
鋭い眼で睨み付ける政宗を制しながら、御館様は吉右衛門の真っ直ぐな視線を受けとめる。
「はい。私どもでは、顕如の居場所についていくつか目星をつけております。ですのでこの機を好機と捉え、顕如をあぶり出したいと考えております」
「織田の姫を餌にか」
「そうさせて頂きとうございます。うわさが届けば、顕如は必ず何かしらの動きを見せることでしょう」
「お前の娘も巻き込まれるかもしれんぞ」
「先に巻き込んだのは、うちの方でございます。何より、まずは信長様の為に働くことが私どもの勤め。それに姫様とひいろには、安土の武将様達がついておりますので、心配してはおりません」
「随分と勝手な自信だな。いいだろう」
「信長様!!」
家康が止めるかのように声を上げるが、御館様からの一瞥にすぐに口を閉ざす。