第6章 自分でもよくわかんねーけど、好きなんだと思う
「笠松先輩。」
「いや、ちょっと待て…!今のは無しだ!」
そもそも俺は女子が苦手で、話す事は愚か、顔を見るのも苦手。それは生身の人間相手で無く、写真を見るにしてもそう。そんな俺が女子を好きになるなんておかしいだろうが…!
「好きなんだと思うって何ですか?それは人としてですか?恋愛対象としてですか?」
突然の告白に対してもいつも通り冷静な浅倉に言葉が詰まる。
「ひ…人、として…。」
「…そうですか。私も好きですよ。笠松先輩の事。」
その言葉に舞い上がるような気持ちになったが、その言葉は俺が人として浅倉を好きという答えに対しての返しだと気付き、舞い上がった気持ちは途端に落ちた。
「私は恋愛対象としてですけど。」
「…は?」
「だから、今言ってくれた言葉、少し嬉しかったけど…悲しかったです。じゃあそういう事で。」
頭を下げると再び俺に背を向け歩き出す浅倉。浅倉の言葉に頭が追いつかない。ぐるぐると思考回路を巡らせた。分かりにくいが、小さなその表情の変化からつい、目が離せなくて、いつも無表情な浅倉が笑ってくれると不思議と嬉しくなったり、浅倉がいると妙に調子が良かったり、他の男といると、胸の奥がモヤモヤしたり、浅倉の隣にいるのは俺でありたいと願うのは…。
「ああ…くそっ!」
漸く気付いた自分の気持ち。浅倉の元へ走り出し、再び手を掴んだ。