第6章 自分でもよくわかんねーけど、好きなんだと思う
「…先輩っ!…笠松先輩!手、痛いです。」
浅倉にそう言われ、慌てて掴んだ手を離した。生まれて初めて女子に触れたから力加減も分からず、夢中になって浅倉の手を引いていた。
「…悪い!」
「急にどうしたんですか?」
そんなの俺が聞きてーよ。どうして浅倉をあの場から連れ出したのか自分自身でもよく分かってねえのに、説明なんて出来るかよ。ただ、浅倉が他の奴といんのが我慢出来なかった。けど、それに理由なんてねえし、なんでそう思うかなんて俺が知りてー位だ。
「…私、お昼まだなんで、食堂戻りますね。」
そう言って踵を返す浅倉。
「浅倉!…その、なんだ…。自分でもよくわかんねーけど、好きなんだと思う。」
その言葉に浅倉は足を止めた。
「は?」
口元を覆い隠すように手を当てた。回らない思考を精一杯フル回転させる。…俺、今、何つった?…好き?俺が、浅倉を?咄嗟に口走った言葉に自分自身でも驚いた。