第7章 月

「へぇ。まさか大野が俊介の友達の友達だったなんて驚いた」


中丸くんには、カズくんと俺は友達だって事にしておいた


「あれから、お前…」

「中丸くん。
昔の話は止めようよ」

「あぁ…そうだな」


やっぱりカズくんにとっては
触れられたくない過去があるんだ


「あっ、俺達さ、もうバッティングやり尽くしちゃって。
他のとこ行こうかと思ってたんだ
ね、カズくん！」

「えっ…あぁ」

「カズくん…？
名前、変わった訳じゃなかったんだ」

「…っ、」

「中丸くん、ごめんね！
またね、風ぽん！」


俺はカズくんの背中を押して
逃げるようにその場を去った

きっと、名前の事も触れられたくなかったんだと思う
…悪いことしちゃった
カズくんにそんな顔させたかった訳じゃないのに

ごめん
…ごめんね。




「相葉さん、」

「…うん？」

「何も聞かないんだね」

「えっ…？」

「中丸くんが言ってた事
変だと思ったでしょ？
名前が変わった訳じゃなかったんだ、とか…」


聞きたい事は山程あるけど、


「カズくんはカズくんでしょ？」

「…」

「過去に何があったかとか
俺にはわからないけど
俺は…カズくん、って呼んでていいんだよね？」

「うん…」


カズくんの顔に
ほんの少し笑顔が戻った気がした