第5章 運命の輪
「明日二人共休みなんでしょ?
泊まってったらいいのに」
「男三人で雑魚寝なんてやだよ」
「俺もパス!」
「じゃあな、雅紀
ちゃんと戸締まりして寝ろよー」
ほんのり紅い顔をした二人が陽気に手を振る
玄関のドアをパタンと締めた途端、家の中がシンと静まり返った
テーブルをあらかた片付け、冷蔵庫のピッチャーの水をコップに注ぐ
キッチンに立ったままそれを飲み干すと
アルコールで熱を帯びた身体が一気に温度を下げて行った
クリアになった頭は壊れた映写機の様に
昨日の晩のたった一時間だけを何度も映し出して
ねぇ、カズくん
今頃君は何してる…?
仕事、かな
仕事、だよね…
スマホの検索窓に店の名前を打ち込んだ
“Stairway to Heaven”
迷わず【U】の扉をタップし、カズくんのページを開く
今日の日付の所には“×”の印
これが、予約がいっぱいで×なのか
お休みだから×なのか
後者だったらいいのにと思う
俺が友達と楽しく飲んでた間にも
もしかしたらカズくんは…
そう思うとなんだかやり切れない
俺だって客の癖に何言ってんだって
分かってる
分かってるのに、