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デリバリー【気象系BL】

第4章 魔術師


その子はその後すぐに店の奥に引っ込んでしまったけど
もしかしてあれって相葉さんだったのかな…?
それとも相葉さんの兄弟…?


「二度目ましてじゃなくて三度目ましてかもしれないんだね、」


もしもその子が相葉さんだったとしたら
この話はしない方がいい
たくさんのお客さんのうちの一人なんて
しかも10年前にたった一度来たきりの客なんて
覚えてるわけないし、それに…


「兄さん…、」


あの日、あの後数時間後に兄さんが亡くなった事も
それが俺のせいだという事も
その事が原因で母さんが壊れてしまった事も
そんな母さんの記憶の中で俺は
産まれた事実さえ消されてしまっている事も
一つを話せば全てを話してしまいそうな気がして

そんな必要もない
ただの客だ

ただの…


ポケットに手を突っ込んで小さく折り畳んだ茶封筒を取り出して広げた




“相葉雅紀”




「相葉、さん…

雅紀さん、」




キュッと胸が締め付けられる

おかしいな、記憶力はいい筈なのに
何故だろう

何か大切な事を忘れている気がする




『カズ…』




兄さん
兄さんは何か知ってる…?

それとも…
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