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デリバリー【気象系BL】

第4章 魔術師


初めてだった
仕事中、客に指一本触れられなかったのは。


相葉さんから渡された封筒の裏には、律儀にフルネームが書いてあった

“相葉雅紀”
それがあの人の名前。


ウリ専の俺なんかに実家の事までバラしちゃってさ
あの幕張の中華料理屋が相葉さんの実家だったなんてマジびっくりだよ…

何度か足を運んだけど結局一度も入る事が出来なかった店
俺はこんなにも薄汚れてしまったから…店の中に入ったら大切な思い出を汚してしまいそうで


「どーしちゃったの、カズ」

「何が?」

「珍しく眉間にシワなんか寄せちゃって。
何か考え事?」

「いや…
あ。コレ、新規くんの分」


料金の入った茶封筒を太一さんに渡した


「待って」

「ん?」

「封筒は俺にちょーだい」


別に意味なんてないけど
なんとなく持っておきたかった

お世辞にも上手いとは言えない癖のある字




“相葉雅紀”




「なんだよ、変なの」


封筒裏に名前が書かれてる事に気付かない太一さんは
中の札と小銭を抜き取って、封筒をぶっきらぼうに俺に返した


「リピーターになりそう?」

「さぁ…どうかな」


社交辞令かもしれない
ただの口約束になんて…何の保証も無いから
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