第3章 力
カズくんの、もうこれっきりみたいな言い方が気になった。
「また…指名してもいいかな?
今度はさ、カズくんと遊びたい!」
「遊ぶ…?」
「ボーリングとかさ、バッティングセンターとか!
ダメ…かな?」
カズくん、驚いた顔してる
そりゃそうだよね
こんなこと言う客、他に居ないと思う
「ダメじゃないけど…
逆にいいの? そんな事にお金使って、」
「そんな事じゃないよ!!
あっ…ごめん、大きな声出して…
そろそろ時間だよね」
「あぁ…うん、」
「今日はありがとう、カズくん」
伝票を持って先にテーブルを立った
本当はもっともっと話したい
カズくんの事を知りたい
でも俺は、カズくんの時間をお金で買ってるお客に過ぎないから
それ以上にはなれないから
友達にはなれないから
「…相葉さん!」
「…うん?」
「次は…バッティングセンターがいいな」
「…うん! 約束ね!」
好きなのかと聞かれたら
好きなんだと思う
でも今は、この感情に気付かないふりをしよう
君の隣りで
君が笑う横顔を見る事が出来たら
それだけで、俺は…きっと満足だから。