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デリバリー【気象系BL】

第1章 吊るされた男







それは
なんの前触れもなく訪れた


いや
今考えてみれば
前兆はあったのだろうと思う



見落としていたんじゃない
気付かないように
わざと見ないようにと

傷付かない為の予防線を張っていたのかもしれない






「だいたいヤッても無いんだろ?」



居酒屋のテーブルに突っ伏す俺に
呆れた顔で痛いトコを突くのは



「ヤる事ヤらねーでモタモタしてたのが原因。
その一言に尽きるね」

「むぐっ…」



いつでもどんな時でも正論で論破する
親友且つ、我らがヒーロー



「ほら。グーの音も出ないだろ?」

「しょーちゃんの言う通りデス……」






長年の片想いがやっとの思いで実って
だから大切にしたくて
手を出さずにプラトニックを貫く事、一ヶ月








『ごめんね、相葉くん
元カレとヨリを戻すことになったの』








あっさりと
本当にあっさりと

彼女は俺の元を笑顔で去って行った







「ちょっと位慰めてくれてもいいじゃんか
もう俺立ち直れない…」


枝豆なんてプチプチ食べてないでさ


「どーしたら元気になんの?」

「どーやっても無理…」


「しょーがねぇなぁ」





『何か考えとくよ』
って頭をわしゃわしゃしてくれる

その手のひらから伝わる温かさが
傷付いた俺の心に妙に染みて
滲んだ涙を隠すようにそっと拭った
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