第15章 デリバリー
平日の昼下がり。
今日から一緒に住む為に、午前中に引っ越しを終えて
カズくんは大家さんにアパートの鍵を返しに行った
家具家電付きの小さなアパートに住んでたカズくんの荷物は
持ってきた物よりも捨てた物の方が多かった気がする
今までだって半同棲の様な生活だったけど。
今日から一緒に暮らすと思うと胸がジンと熱くなる
新居を探しても良かったけど
『三年半分の思い出が詰まってるから此処がイイ』
って、カズくんが。
二つ並んだ緑と黄色の歯ブラシも
お揃いのモコモコのスリッパも
何も変わらない
――― ピンポーン ―――
ほら
鍵を持ってるのにピンポンする癖も。
ガチャリと玄関のドアの鍵を開ける音がして
俺は“お帰り”を言う為に出迎えた
「あれ…?」
確かに解錠はされてるのに
おかしいな。誰も居ない
「カズくん?」
不思議に思って玄関を開けると、そこには純白の薔薇の花束を抱えたカズくんが立っていて
驚く俺にニッコリと笑ってこう言ったんだ
“ 大野デリバリーです
愛をお届けに上がりました ――― ”
気象系BL小説 『デリバリー』
〜 完 〜