第13章 悪魔
「多部ちゃんからだ。
もしもし?」
翔ちゃんが見慣れないアプリのアイコンをタップすると
スマホの向こうから明るい女の子の声が聞こえた
『Hello,翔くん。準備出来てる?』
準備?
準備って何だろう
「あー、ごめん。話に夢中になってた。
すぐするわ。用意できたらかけ直すから」
翔ちゃんはスマホをテーブルの上に置くと、俺に枕とクッションを持ってくるよう指示して
カズくんにはコップ一杯の水を飲むようにと言った
「雅紀、枕貸して」
ソファーの肘掛けに枕を立てかける
「大野くん、ソファーに寝て?」
「…こう?」
カズくんが言われた通りに横になると
膝を立ててその下にクッションを置いた
「目、閉じて?
体勢どう? リラックス出来てる?」
「うん、多分」
「催眠誘導と催眠術は種類が違うらしくて。
誘導の方は本人がリラックスできる環境を作ってあげるといいんだって。
雅紀、照明少し落として」
「わかった」
薄暗い、と感じる位の部屋の中
今度は翔ちゃんが多部さんに電話をかける
「準備出来たよ。スピーカーにするね」
枕の近くにスマホを置くと
ソファーから少し離れたラグの上に二人で座った
『初めまして。多部と申します』
「…初めまして。大野、です」
『大野さん。リラックスしてくださいね?
催眠誘導は決して怖いものじゃないから。
では、始めますね』
一番緊張してるのは俺かもしれない
膝の上に置いた拳を、ギュッと握りしめた