第13章 悪魔
それから五日が過ぎた頃
今、海外にいるらしい多部さんと連絡がついたと翔ちゃんから電話があった
催眠誘導は電話でも出来るらしくて、乗りかかった船だからと翔ちゃんもその場に立ち合ってくれる事になった
「…初めまして。大野和也、です。
今日はよろしくお願いします…」
「櫻井です。…よろしく」
ぶっきらぼうな挨拶は、翔ちゃんの警戒心の表れ
「ほらっ…!二人共カタイよ?
もっとリラックス!リラックス!」
間を取り持つように
カズくんの緊張を和らげるように
俺は努めて明るく振る舞った
「確認だけど、」
「っ、はい、」
「大野君は雅紀の事、本気なんだよね?」
「ちょっと、しょーちゃん!」
「…本気です、もちろん」
不穏な空気が流れる
「最初に言っとくよ」
「…はい、」
「コイツの事泣かせるような事したら…俺が許さない」
「しょーちゃん…」
威嚇ではない、だけど強い力を持ったその言葉は
長年親友として側に居てくれた翔ちゃんならではの…優しさだと思った
「約束します」
カズくんもまた、そんな翔ちゃんの想いを汲んでか
真っ直ぐな瞳を返していた