第13章 悪魔
「お願い! お願いしますっ…!」
『深入りすんな、って俺言ったよ?』
「いや、そうなんだけど…」
『こうなる予感してたんだよ。だから…』
「そこをなんとかっ…!
お願い。頼みの綱はしょーちゃんだけなんだ!」
電話の向こうの翔ちゃんには見える訳ないのに
腰を90度に曲げて深々と頭を下げた
『しょーがねぇなぁ。わかったよ、連絡取ってみるから』
「ありがと、しょーちゃん!」
前に聞いたことがあったんだ
大学の時のサークルの仲間に凄いのがいる、って。
『マジでさぁ、ビビるなんてもんじゃねーよ!
肩に手を置いてホソボソッと何か言ったと思ったら、指を鳴らした途端、相手の意識が失くなるんだよ!
催眠状態に入ってんの!』
『それ相手もグルなんじゃなくて?』
『グルなんかじゃねーよ!
催眠術かけるとかは言ってねーし!って、俺の話に興味持てよ、雅紀!』
『持ってる持ってる。ちゃんと聞いてるってば』
へぇ、そうなんだ。くらいにしか思ってなかった、当時の翔ちゃんの催眠術の話
ヤケに興奮気味に話してたなって事だけは覚えてる
この時はまさか、自分が後々この人に世話になるとは思ってもみなかった
「確か女の子だったよね、その子」
『そうだよ。多部ちゃん、って言うんだ』