第15章 どうして私は……
「……春野さん、顔が赤いけど大丈夫?」
「だ、大丈夫……です……」
「そう。 なら、いいけど……」
「あ、あの……神原秋人……言っておきますけど、私……博臣先輩とはキスなんてしてませんから」
「じゃあ、何で保健室なんかに……?」
「そ、それは……」
(本当のことを言いたくはない……あんな恥ずかしくなるようなことを自分の口からは言えない……)
そんなことを思いながら昨日の保健室に行く前にあった出来事を思い出し、私はまた顔を赤くし俯いた。
「春野さん、本当に大丈夫? 具合悪いの?」
「だ、大丈夫です……」
「……ねぇ、博臣と何かあったの?」
「⁉︎ い、いえ……何も……//」
「それならいいけど。 まぁ、博臣が美月以外に興味を示すことはないかもしれないけど一応、色々と気をつけてね?」
「⁉︎」
神原秋人のその言葉を聞き少し、胸がチクリと痛んだ。
「春野さん……?」
「……」
わかってるつもりだったのに……
改めて言われると、って……
いやいや、私はなんでショックを受けてるの?
私はべつに博臣先輩が好きって訳じゃないはずなのに……
「……春野さん……本当に大丈夫?」
だけどーー……
「……ねぇ、神原秋人……」
「な、なに、春野さん?」
「……私が美月ちゃんになんて勝てないよね……」
「え?」
何故か、切なくなって……
悲しくなったんだ……。
「……そうだ……私は美月ちゃんになんて……勝てない……」
私はそう呟きながらフラフラと1人で教室に向かった。
そんな私に向かって神原秋人は何かを言っていたが私の耳に言葉は届かなかった。