第40章 そしていつもの日常に戻り……(完)
ーー……
ー…
学校をあとにした私は博臣先輩と並び、けれど少し距離を開けて歩き、ひと気が少ない公園までやってきていた。
「……美月から聞いた。 最近お前が何で俺に冷たかったのかってことを……」
二人で腰掛けたベンチで先に口を開いたのは博臣先輩で。 私は先輩の口から出た言葉を聞き俯けていた顔を上げ、先輩を見た。
「……やっぱりまだ、俺のことを受け入れれない、のか……?」
「……ごめんなさい、先輩。 先輩は私の兄貴とは違うってわかっている、つもりなんですけど……やっぱりまだ少し身体が拒否反応を起こしちゃって……」
目を伏せ、そう呟くと博臣先輩は「そうか……」と小さく呟いた。
先輩のその声は寂し気な声色をしていた。
(先輩と付き合ってもう何ヶ月も経っているというのに……)
「……先輩には私の兄貴とは違って良いところがたくさんあるというのに……」
「……? 俺の良いところ?」
先輩は首を傾げ私を見る。
「優しいところ、とか……気を遣ってくれるところとか……それからーー」
私は先輩の良いところを何個かあげていく。
そしてーー
「……こんな私を思いやってくれて、呆れもせず付き合ってくれて、愛してくれてるところ、とか……」
私はそう言って博臣先輩に目を向ける。
「本当は、すごく、すごく……嬉しくて……大好き、なんです」
「……華菜」
「けど、身体が拒否反応を起こさなくなるまで、まだ少し時間が掛かりそうです。 ……それでも、先輩は私を受け入れてくれますか?」
不安気な瞳で先輩を見つめると先輩は私をギュッと抱き寄せ「当たり前じゃないか……」と呟いた。
そして……
「大好きだ、華菜。 ……どれだけ時間が掛かっても俺は待つよ。 お前が俺を受け入れてくれるまで。 だから、安心して俺の傍にこれから先もいてくれ……」
博臣先輩は私の耳元でそう囁いて、私の唇に軽く触れるだけのキスをしてくれたのだったーー……。
(完)