第36章 複雑な思いのままで……
-華菜Side-
けっきょく私は神原秋人に告げられたことにちゃんと返事を返せずにただ、「ごめん……」と、言い残して保健室を去り、今は屋上へと続く階段までやってきていた。
「……神原秋人はいつから私のことを好きだったのかな」
今から博臣先輩に会うというのに私の頭の中を埋め尽くすのは『博臣先輩からの<答え>』よりも『神原秋人のこと』だった。
(放課後まではあんなに博臣先輩からの<答え>のことで頭の中がいっぱいだったのに…今は神原秋人のことで頭の中が埋め尽くされてるなんて……)
こんな状態のままで私は屋上に行っていいのだろうか……?
こんなモヤモヤとした状態で博臣先輩達に会ってもいいの………?
神原秋人から告げられた『あの言葉』への返事をうやむやにした感じのままで、本当にいいのだろうか……?
いや、よくはないだろう……。
(でも、約束は約束だ。 会いに行かないわけにはいかない。 今更断ることはできない……)
なら会うしかない。
会って、<答え>を聞くしかない……
そのあと、もう一度神原秋人に会って、ちゃんと話をしよう。
博臣先輩からの<答え>を含めて、もう一度、彼と話をするべきだ。
神原秋人から言われた『あの言葉』の返事はそのあと、彼にちゃんと伝えよう。
そう心に決め、私は屋上へと続く階段を上り、ドアノブに手をかけーーゆっくりドアを奥へ押した。