第31章 肝心な<答え>は言えずに……
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……
ーー電話終了後。
「ごめんなさい、博臣先輩……さすがに兄が心配して煩くなっているので今日は帰ります」
「あぁ、昨日今日と悪かったな……」
「いえ。 兄の話によると昨日の夕方に美月ちゃんが家に連絡をしてくれてたみたいで……」
「そうか、なら大げさにはならなさそうだな」
「……まぁ、はい。 けど、多分色々聞かれそうで帰る前から気が重いですが……」
「……が、頑張れ……」
「……はい。 ありがとうございます……ではお邪魔しました」
華菜は俺に頭を下げ部屋を出て行った。
(本当は家まで送ってやりたかったんだが……)
『病み上がりだから今日はゆっくり休んで下さい』って華菜に言われたため、大人しく従うことにした。
「……あ。 けっきょく風邪を引いた原因について詳しく話してない……」
けど、詳しく話さなくて良かったのかもしれない。
あれ以上話すことになっていたら
俺は美月とした会話の内容をも話さなきゃいけなくなっていたかもしれないからな……。
「あんな内容を華菜に話すなんて無理だ……」
美月が俺に『好き』だと言ってきたことを華菜に話すことなどできない。
けれど……
華菜はもしかしたら勘付いたかもしれない。 もし、そうだったら……いずれ言わないといけなくなるだろう。
そして。
俺は近いうちにその全てに<<答え>>を出さないといけなくなるのだろう。
それはきっとーー……
二人のうちのどちらかを傷つける選択だ。 あるいは二人共を傷つける可能性もある選択になるかもしれない。 けれど俺は必ずその<答え>を出さなきゃいけないだろう。
ーー二人の前で……。