第30章 二人の頭に過ったのは……
「お、お前は何でそこは平然でいるだよっ⁉︎ 普通に兄妹だろうと恥ずかしがったりするものだっ‼︎」
博臣先輩は私の肩を揺らしながら叫ぶ。
「……そういうものなんですか?」
私は首を傾げて呟やいた。
「そういうものだっ! だいたい何で抱きしめられたり至近距離で見つめられたりされるのを嫌がるのに裸を見られることに何も感じないんだ、お前はっ‼︎」
博臣先輩は肩を揺らし続けたまま私にそう言ってくる。
(そんなふうに考えたことはなかったなぁ……だって、兄妹だし……)
「でも兄妹で裸を見られたら恥ずかしいなんて意識しないかと……抱きつきとか至近距離は周りの目が気になるものだけど……」
「……ん? そういうものなのか?」
「そういうものだと思います。 兄妹で恥ずかしいって思っているほうがおかしいですよ。 それじゃまるで美月ちゃんが博臣先輩のことを一人の男として見て……」
「……!」
私が冗談交じりにそう言うと博臣先輩は一瞬目を見開いて、そしてフリーズした。
「…………」
私も私で冗談交じりにそこまで言っていたが続きは言うことはできなかった。
ーーいや、言えなかった。
ーー言いたくはなかった。
けれど。
(……ま、さか……そうじゃない、よね? で、でも……兄妹で意識するってことはつまり美月ちゃんが博臣先輩のことを……)
私の頭の中をそんな考えが支配し始めたのだった。